国語のテスト

 塾に来ている、某小学校1年生のYちゃんが『おおきな かぶ』のテストを持ち帰り、「二重丸じゃなかった」と悔しそうでした。その学校の1年生はテストに点数をつけるのではなく、全問正解だと「二重丸」、どこか間違うと「一重丸」のようなのです。

 そこで、そのテストを見せてもらいました。それを見て、ちょっと一言、言いたくなったので、一言。「この学校の国語教育の理解度は大丈夫?」

 Yちゃんが×をつけられた問題は、次のようなものでした。(この学校は、昔からテストは自作で、市販のテストは使っていません。これはとても素晴らしいと思っています。)

上段に本文、下段に問題が配置されています。問題の問題は「2 どんなかぶが できましたか。」というもの。この問題文の横に、本文の「あまい あまい、おおきな おおきな」を抜き出させるためのますがあります。おそらく、これまでのテストのイメージを持っている人が見たら、ごく普通に思われるでしょう。

さて、Yちゃんはどのように回答したかというと、「あまい おおきい」と書きました。本文は「あまい あまい、おおきな おおきな」であり、ますもそれに合わせて設定されているのだから、その通り書かなければ×になる、と考える方は多いことでしょう。しかし、それでいいのでしょうか。そもそも、小学校の国語の問題で、本文をそっくり抜き出させるような問題を設定すること自体、疑問なのですが、それは少し横道にそれるのでおいておきます。

Yちゃんは、このお話を読んで、おじいさんがまいたかぶが、甘く大きく育ったことをとても喜んでいたのです。だから「どんなかぶ?」と聞かれて、すぐに「あまい、おおきい」と答えたのです。これは、まさにYちゃんの「解釈」です。ここが大切なところなのです。PISA型読解力は「読むことの三つの側面」として「情報へアクセス・取り出し」「統合・解釈」「熟考・評価」を掲げています。この中の「情報の取り出し」は我が国の国語教育では伝統的にしっかり取り組んできました。しかし、「解釈」や「熟考・評価」はどちらかといえばおろそかにされてきたのです。したがって、Yちゃんが答えたような回答を期待したテスト問題を作れないということは、本当に今の国語教育で大事なことが何かを十分に理解でしてないのではないか、ということになるです。ますがあったら、そのますに合うように埋めなさい!というような受験学力・受験テクニックは小学校1年生に何の意味もありません。それよりも、自分の考えを書けたことを褒めてあげたら、Yちゃんはきっと国語大好きな子に育っていくはずなのです。